鰻(うなぎ)が、絶滅の恐れがある国内の野生生物をその危険度に応じて分類する「レッドリスト」の危惧ⅠB類に指定された。環境省が魚類のレッドリスト改訂版をまとめ一日、発表した。

 「危惧ⅠB類」には、例えばアマミノクロウサギとか、ライチョウとか、国の特別天然記念物が指定されている。鰻の蒲焼を食べるというのは、言ってみれば、アマミノクロウサギのから揚げとか、ライチョウの焼鳥とか、そんなレベルの大変なご馳走になってしまったのだ。

 だが、「近い将来に絶滅する危険性が高い」と警告されても、私たちは鰻を食べる。今年の土用の丑の日には、去年と同じように日本中で鰻を焼く煙が立ち上り、スーパーマーケットでは安売り合戦が繰り広げられるに違いない。「値段が高い」と嘆きながら、鰻を食べる。「中国産はやっぱり今いちだな」と毒づきながら鰻を食べるのだ。

 世界の鰻の七割を日本人が食べているとされる。ところが、こんなに食べているのに、その産卵場所はどこか、明確には分かっていない。東京から遥か二千㌔も南のマリアナ諸島の近くの海の中にそびえる山だろう、と推定されているだけだ。当然、その生態も謎だらけ。人工孵化も研究レベルでは試みられているやに聞くが、実現は夢の次元の話だろう。