道立旭川美術館(常磐公園)で、巡回展「日本の洋画 百五十年の輝き」が開催されている。

 幕末から明治への転換期、日本の美術界では油彩を中心とした「洋画」が誕生した。同展では、笠間日動美術館の優れたコレクションの中から、その黎明期に重要な役割を果たした高橋由一や、岸田劉生、鴨居玲など、巨匠たち三十五人の作品六十点余りを一堂に展覧している。

 見どころの一つである高橋由一の有名な「鮭図」は、真筆とされるものが三点しかないといわれている貴重なもの(残りの二点は、東京藝大と山形美術館が所蔵)。同展の鮭図は紙ではなく板に描かれており、板の木目がそのまま背景になっているのが特徴だ。鮭のような身近なものを題材に選んだのは、当時珍しかった油彩を広く理解、普及させるためだったといわれている。

 岸田劉生の作品は、旭川会場では特別に十八点が追加され、特集コーナーが設けられている。「寒山風麗子像」など一風変わった麗子像や、本の装丁画など、写実のイメージが強い岸田の様々な作風を楽しめる。

 同館の藤原乃里子学芸課長は、「岸田劉生は、その画業の中で作風が移り変わっていきますが、根底には常に『内なる美』や本質的なものを見つめる眼差しがありました。その創作の軌跡をご覧いただけたら」と話す。

 会期は九月一日(日)までで、残すところあと十日余り。観覧料は一般千円、高大生六百円、中学生以下無料。問い合わせは同館(TEL 25―2577)まで。(岡本成史)