ASAHIKAWA DESIGN WEEK(あさひかわデザインウィーク・ADW)2024が六月十五日から二十三日までの九日間にわたって開催された。今年のテーマは「Life with.」。その概略を三回に分けてレポートする。

北彩都ガーデンで「あさいち」
今後に大きな手応え

 十五、十六日の二日間、北彩都ガーデン(宮前二ノ一)で初開催された「あさいち」には、二日間で延べ約七千人が来場した。

 会場には三十二社のブースが並び、食材にこだわったフードやドリンクのほか、木製のキッチン道具やカトラリー、生花などを販売。来場者は気持ちの良い自然の中で、鏡池沿いに置かれたロングテーブルを囲み、食事や会話を楽しみながら朝の時間を過ごした。

 市は今年度から、石川俊祐CDP(チーフデザインプロデューサー)を中心に「フードフォレストあさひかわ」構想を本格始動。その一環で進められている「朝のあさひかわ」プロジェクトの実証実験を兼ねた取り組みとして「あさいち」が企画された。

 ADW2024のクリエイティブディレクター・山田明宏さん(資生堂クリエイティブ/クリエイティブディレクター)は「午前七時からという開始時間に『早いのでは』という声がありましたが、この取り組みを継続し、今後、平時にも行うのなら、生活者の時間軸に則るべきと考え、そのまま通しました。結果的に、当初想定していた数の十倍ほどの人が来てくれ、スタートから一時間足らずで完売するものも出るなど大盛況でした。旭川市民のライフスタイルに『朝のおいしい時間』を練りこむという部分で、一発目としてはうまくいったと思います。そして何よりも、この企画をほぼ地元の若手のメンバーだけの力で完結できたことが、本人たちにとっても、まちにとっても、一番大きな成果でしょう」と振り返った。

 

生物学者の福岡さんが講演
「人間は地球上で唯一利己的な存在」

 十八日には市公会堂(常磐公園)で「ADW基調講演」が行われた。

 講師は、生物学者で作家の福岡伸一さん。一九五九年、東京生まれ。京都大学卒、同大学院博士課程修了。ハーバード大学研修員、京都大学助教授などを経て、現在、青山学院大学教授や、米・ロックフェラー大学客員教授を務める。サントリー学芸賞を受賞し、八十八万部を超えるロングセラーとなった『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)や、『動的平衡』シリーズ(木楽舎)など、「生命とは何か」を動的平衡論から問い直した著作を数多く発表している。

 福岡さんは幼少期の体験や、自身の考え方が変わったきっかけなどを話したあと、生物学者のルドルフ・シェーンハイマーの「生命は機械ではなく流れ」という言葉を紹介し、「生命と食べ物の関係は、車とガソリンと同じように、人間が食べたものは体内で燃やされエネルギーになり、燃えカスは息や排泄物として体外へ排出されると考えられていた。そこで、特殊な方法で原子に印を付けてマウスで実験してみた結果、食べたものの原子はマウスの体全体に散らばり、マウスと一体化していた。したがって、生命にとって食べ物を食べることはエネルギーを得るだけでなく、自分自身をつくりかえているということが原子のレベルで明らかになった」と説明。「私たちの体は、物質レベルでは一年も経てば、別人になるほどつくりかえられており、シェーンハイマーは私たちの体は『個体ではなく流体』と定義し、これを動的な状態と表現している。私はこの考え方をさらに展開して、絶えずバランスをとりながら、その状態をつくりかえていることから『動的平衡』という言葉を当てはめました」と語った。

 福岡さんは最後に、「地球上に人間という種が現れて以降、人間だけが生命の原理である利他性を忘れ、資源を開発したり、土地を占有したりするなど、利己的に行動している。一方、人間以外の生物は全て、自分の範囲を守り利他的に振る舞っている。地球上における様々な問題は、人間が利己的に振る舞っているからこそ起こっているもの。昨今、叫ばれている地球の持続可能性を高めるためには、人間の行動をいかに利他的に変えていくかを考えなければなりません」と締めくくった。(東寛樹)