一八九六年(明治二十九年)に創業し、百十七年にわたって営業を続けてきた渡邉薬局(東旭川北一ノ六)が今年三月で廃業し、骨董的価値のある看板や道具を旭川兵村記念館(東旭川南一ノ六)に寄贈した。

 同店初代の渡邉鶴三郎氏は、薬問屋の多い大阪の道修町で丁稚奉公をしていたが、先に永山に屯田入植していた実兄に呼ばれて来道した。日清戦争で衛生兵に応募し東京で訓練を受け、終戦後に旭川兵村の番外地に小さな家を買って薬屋を開いたのが同店のはじまり。三代目・利幸氏の代で店の長い歴史に幕を閉じた。

 寄贈された品は、目薬などの看板のほか、調剤のための器具、ガーゼや包帯を再利用するための消毒器、また計測不能になった体温計の水銀を調節する器械といった珍しい道具も含まれている。

 脳病薬「健脳丸」の自立式の看板は、好事家が「百万円で譲って欲しい」と店に訪ねてきたこともあった。また馬用の薬「ロイマチ錠」の看板もあり、当時の兵村で多くの馬が飼われていたことを物語っている。

 同館の入館料は大人五百円。火曜休館(祝日の場合は翌日休館)。午前九時半~午後四時半。問い合わせは旭川兵村記念館(TEL36―2323)へ。