朝日新聞九月五日付一面肩の記事。見出しは「本社に新聞協会賞」「自民派閥の裏金問題 報道」。以下、本文。

 ――日本新聞協会は四日、優れた報道に贈られる二〇二四年度の新聞協会賞を発表し、朝日新聞社の「自民党派閥の裏金問題をめぐる一連のスクープと関連報道」(自民党派閥裏金問題取材班)が選ばれた。(中略)
  朝日新聞は二三年十二月一日付朝刊一面トップで「安倍派 裏金一億円超か パー券不記載 立件視野 ノルマ超分 議員に還流 東京地検特捜部」と特報。自民最大派閥の安倍派が政治資金パーティー収入を裏金化して所属議員に還流し続けていた疑いを明らかにした。松野博一官房長官(当時)ら同派幹部が裏金を受け取っていたことなども独自に報じ、還流システムができた経緯や政治資金規正法の構造的欠陥なども指摘した。
 新聞協会の授賞理由は「政治とカネを巡る構造を多角的に掘り下げ、裏金問題の解明を終始リードし社会に強いインパクトを与えた」。そのうえで「自民党の派閥解体や政治資金規正法の改正などの流れに大きな影響を及ぼし、権力監視の役割を果たした」と評した。(引用終わり)

 さらに六、七面で「めくって調べた収支報告『ザル法』追及」「法改正は不十分 報道続けて 岩井奉信・日大名誉教授(政治学)」「政治の闇 総力取材で問う」「『不都合な事実解明』合言葉に」「安倍派一掃した首相 背景深堀り」の見出しで、東京社会部や政治部の記者たちが、まさに総力を挙げてコツコツと取材した様子を伝えている。読む側はドキュメンタリーを観ている感覚になって面白かった。

 記事には、「(東京地検特捜部の)捜査の端緒は『しんぶん赤旗』の報道に基づく告発(最終的に不起訴)によるもので、自民党の五派閥でパーティー券の集計ミスがあるというもの」と一応、仁義を切っている一文がある。というのも、この裏金問題のスクープは、そもそも共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が一年も前に書いているのだ。

 「しんぶん赤旗」の社会部長がX(旧ツイッター)に次のような投稿をしているそうな。

 ――自民党派閥の裏金は、「しんぶん赤旗」日曜版が二〇二二年十一月六日号でスクープしました。「朝日」が自民裏金報道で新聞協会賞とのことですが、「赤旗」から一年以上遅れた二三年十二月に出しています。しかも東京地検特捜部の動きをうけた記事です。

 もう一人、表彰されるべきなのは神戸学院大教授の上脇博之氏だろう。その上脇教授は、北海道新聞デジタル八月一日配信のインタビュー記事で、東京報道部の中村公美記者の「政治資金パーティー裏金事件は、上脇さんの刑事告発が東京地検の捜査のきっかけとなりました」の質問に答えて次のように語る。

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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