六月二十八日付朝日の一面トップの見出しは、「定年延長『黒川氏のため』 大阪地裁判決」「安倍政権の検事長人事」。以下、リードと本文の冒頭。

 ――東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年を延長した二〇二〇年の閣議決定をめぐり、神戸学院大の上脇博之教授が関連文書を不開示とした国の決定を取り消すよう求めた訴訟の判決で、大阪地裁(徳地淳裁判長)は二十七日、不開示決定の一部を取り消した。「延長は黒川氏のためと考えざるを得ない」と指摘した。

 検察官の定年は検察庁法で「六十三歳」と定められていたが、黒川氏の定年を目前に控えた二〇年一月、当時の安倍晋三政権が国家公務員法の延長規定を適用。検察官として初の定年延長を決めた。この規定は独立性が求められる「検察官に適用しない」とされてきたが、政府は「解釈を変更した」と説明し、重用したとされる黒川氏を検事総長にする道を開く形となった。

 上脇教授が「黒川氏のための定年延長」を決めた経緯がわかる文書の開示を求めたところ、法務省は大部分を「該当文書なし」と不開示に。裁判で国が「黒川氏のためではない」と理由を説明したため、延長が誰のためだったかが焦点となった。

 (中略)黒川氏の定年延長をめぐっては、法改正を経ずに閣議決定した経緯に、「司法への政治介入を許す」と批判が相次いだ。その後、定年延長を制度化する検察庁法改正案が出されたが、廃案となった。黒川氏は定年延長後、新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出る中での賭けマージャンが発覚し、辞職した。(引用終わり)

 朝日は、この一面トップの記事と第一社会面トップ。毎日も一面トップと第一社会面肩の扱い、「黒川元検事長を巡る経過」の表も。日経は同日付第二社会面肩と経過表示を添付して「国家公務員法『解釈変更』、黒川氏のため」の判決文を掲載している。

 “事件”当時、安倍首相は、森友学園への国有地大幅値下げ、加計学園獣医学部の新設に関わる友人優遇、そして桜を見る会のすさまじい公私混同など、政権の私物化が次々に露見し、安倍首相がウソをつきまくっている最盛期。黒川東京高検検事長は首相の文字通り“守護神”だった。この守護神を国の検察のトップ、検事総長にしてしまえば、安倍のやりたい放題は無限大になる。この国の民主主義にとって重大な岐路、ターニングポイントだったのだ。

 その歴史的大事件の判決について、読売新聞が報じたのは翌日、二十九日の朝刊だった。第二社会面の肩。三段見出しは、「『黒川氏のため』法解釈変更」「検事定年 文書不開示取り消し判決」。六十四行の記事、それだけ。報じたくない、読んでほしくないよー、の気持ちが伝わる扱いである。旧統一教会(世界平和統一家庭連合)にまつわる恨みを買って暗殺された安倍に、どんだけ忖度しているのよ。あぁ嫌だ。

 判決後、記者会見した原告の上脇教授の発言について、毎日の社会面の記事を引用しよう。

 

(工藤 稔)

(全文は本紙または電子版でご覧ください。)

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