二十三日付の読売は、安倍晋三首相が静岡県小山町の冨士霊園で、祖父の岸信介元首相と父親の安倍晋太郎元外相の墓参りをする姿をご丁寧に写真付きで伝えた。記事は、次のように書く。
――首相は墓参後、記者団に対し、「国民の命と平和な暮らしを守るための法的基盤が整備された」と報告したことを明らかにした。21日で第2次内閣発足から1000日を迎えたことについて「これからも全力で国政運営にあたり、強い経済をつくっていくことに全力を挙げていくと誓った」とも語った。(引用終わり)
NHKのニュース原稿もそうだったのだが、この首相のコメントにある「これからも」は、次の「全力で…」にかかっていて、併せて「強い経済をつくっていく…」にもかかると、聞く側には受け取れる。つまり、「これまでも強い経済をつくることに全力を挙げてきた」、そう強調したいようだ。おいおいこの数カ月間、テレビも新聞も、世論も、「今国会の最大の焦点」は安保法制だったではないか。あらゆる手段を講じて、多くの国民の声に耳をふさいで、法案成立に突き進んだことを忘れろ、ということか。
二十四日には、自民党の両院議員総会で安倍総裁(首相)の無投票再選が正式に決まった後の記者会見で、首相は唐突に「アベノミクスは第二ステージに移る」と言い始めた。二十五日付各紙の報道によれば、新しい「三本の矢」を放つのだそうだ。第一の矢は「希望を生み出す強い経済」、第二の矢「夢をつむぐ子育て支援」、そして第三の矢は「安心につながる社会保障」だと言う。
GDP(国内総生産)を五百兆円から、六百兆円に増やす。希望出生率一・八を実現し、五十年後も人口一億人を維持する。「介護離職ゼロ」と生涯現役社会の構築を目指す。なんだか、私たち国民の近未来には、ものすごく希望に満ちた、バラ色の社会が待っているみたい。
(工藤 稔)
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