十日付朝日新聞朝刊は、経団連が文部科学省による国立大学の「文系見直し」論に反対する声明を発表した、と伝えた。以下、引用。

 ――文部科学省が国立大学に人文社会科学系学部の組織見直しを求める通知を出したことについて、経団連は9日、安易な見直しに反対する声明を出した。通知の背景に「即戦力を求める産業界の意向がある」との見方が広がっていることを懸念し、「産業界の求める人材像はその対極にある」と文系の必要性を訴えた。(引用終わり・後略)

 記事を読んで、逆に、経団連に名を連ねるような大企業・有力企業も即戦力を求めるのだなぁと感じた。世論の批判が図星の部分があるから、あえて弁解の声明を出す必要があったのだろう。地元の中小企業の経営者からは「新卒を採用して、時間と金をかけてじっくり育てる体力も余裕もないから、どうしても即戦力となる中途採用に走ってしまう」という話を聞く。他人ごとではなく、弊社だって同じようなスパイラルの中にある。

 社会全体が何やら気ぜわしく、時間に追われる空気の中で、目の前の利益を追求してしまう。そんな世の中が選んだ為政者が、産業界が求める、社会に従順な、ひいてはお国のために身を挺する国民をつくる教育を、と考えるのは当然の帰結だろう。畏敬すべき先人たちが説いた「無用の用」なる言葉が忘れ去られようとする時代に、「日本を取り戻す」などと意味不明の言葉を叫ぶ宰相が現れたりする。掲げる政策の何一つとして国民の半数の支持も得ていないのに、その政権支持率は四〇%を維持する。不気味な潮流を感じざるを得ない。

 さて、東海大学旭川キャンパスの閉鎖(二〇一三年度で札幌に統合)という事態を受けて、市内の企業経営者らが立ち上げた「旭川に公立『ものづくり大学』の設置を目指す市民の会」(長原實会長)にまつわる近況を久しぶりに書くことにする。

 

(工藤 稔)

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