「内閣総理大臣として責任を負っている。私も先頭に立つ」。今さら、この時点で、そんなに力まなくてもいいのにと思った。先月十九日、東京電力福島第一原発を訪問した際、安倍総理は防護服に二重のゴム手袋、全面マスクという「完全装備」だったそうな。

 二〇一一年三月十一日以来、ずうっと気になっていたのだが、今回の汚染水が漏れ出して海に流出している問題と、その汚染水から放射性物質を取り除く装置ALPS(アルプス)のトラブルの報道を読んだり見たりしながら、暗澹たる気分に陥った。この現場で作業している人たちは、どんな事情があって、このような文字通りの「命懸け」「命と引き換え」の仕事を選択したのだろうか、と。

 ニュースは、ALPSのトラブルは、「タンク内に作業員が置き忘れたゴムパッドが排水口に詰まった」のが原因だと伝える。だが、そのタンク内の放射線量の数値を私たちは知らない。彼の累積の放射線量を知るすべはない。わずかな時間滞在するだけの安倍総理は完全装備。「命を売る」現場で働く労働者の放射線量の情報は、まさに「完全にコントロールされて」、私たち国民には知らされないのだ。原発とは、民守主義の対極にあるものだと、この一事だけでも分かる。枕はここまで。

 へそ曲がりなのか、「大成功だー」と騒いでいるのを見ると、「本当に成功なの?」と斜めに見てしまうクセがある。今回のロシア・サハリン州ユジノサハリンスク市で開かれた「道北物産展」(九月七―八日)もその例だ。

(工藤 稔)

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