旭山動物園のフラミンゴが逃げ出したという話を聞いて、「はて、この感じ、どこかで擬似体験したような…」と思った。テレビニュースの映像を見ると、紋別市のコムケ湖で、もともとそこに棲んでいるみたいな雰囲気で餌をあさったりして。いかにも気持ちよさそう…そうだ、思い出した。旭山動物園の元飼育係で絵本作家のあべ弘士さんの最初の絵本「旭山動物園日誌」(一九八一年)に、そっくりのエピソードがあったはず。本棚を探して引っ張り出してみると、あったあった――
○月×日
グワラン グワラン
グワラン グワラン
ここしばらく
ずいぶんと精の出ること。
いくら準備運動しても、
翔べる訳がないだろう。
風切り羽はちゃんと春に切ってあるさ。
グワラン グワラン
グワラン グワラン
それにしてもがんばるね。
と思っていた矢先だ。
風の強い日だった。
風下でじっと羽を広げていたかと思う と、
「グワァッ」と翔んだ。
(中略)
いつもあの大きな大きな体を
もてあましていたヤツが、
あんなにもりっぱに翔んでいった。
「もう帰らんでいいぞ」
と一瞬思った。
(後略)
このページには、大きなペリカンがフワリと空に浮かび、その下で餌のバケツを手に呆然と見上げる飼育係と“うらやましそうな”目つきの八羽のフラミンゴが描かれている。
コムケ湖で捕獲作戦に当る坂東元園長には申し訳ないが、「寒くなるまで、しばらく帰らんでいいぞ」と思ってしまう自分がいる、ハハハ。
(工藤 稔)
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