過去に旭川で勤務した経験がある、全国紙の元記者からメールが届いた。幾度も転勤を繰り返しているのに、今も弊紙を購読してくれている、律儀な男。現在は、記者稼業から足を洗い、関連会社の経営陣に籍を置いている。定年を控え、故郷の福島に家を構えて夫人を残し、東京に出稼ぎに出ているのだそうだ。その彼が、弊紙前週の一面、「小菅前動物園園長 市長選出馬の意志固める」の記事を読んでの感想である。旭山動物園の“冬の時代”と、若き日の小菅さんを知っている、心優しきよそ者の彼の視点は、なかなか味わい深いものがある。紹介する。
――北海道は暑くて湿度が高かったり、大雨に見舞われたり、菅内閣同様?変な雲行きのようですね。
八月十日号、「小菅さん、やっぱり出るのかー?」と胸中複雑な思いで読みました。個人的には(カミさんも)、多分出ないだろう、出て欲しくないなあーと思っていたので、内堀、外堀を埋められてのギリギリの判断を迫られたとも考えたりしました。
とすると、小菅さんの性分からいって、「ここで退いては男が廃る」という決断に傾いたことは、それとなく類推できます。
ただ、過去の市長選で、鳴り物入りで担ぎ出された候補者(例えば佐々木秀典さん)が、期待されたほどの得票に達せず敗退したケースを望見した経験から、せっかく担ぎ出したのにもかかわらず、当選につなげるだけの積み上げ、どぶ板を踏む努力が乏しくて、上滑りに終わってしまう危険性を感じています。
志は高いのだけれど、それを現実に落とし込む不断の努力が付いて来れなくて、結果、武士の商法のようになってしまう心配はないか? とついつい思ってしまうのです。
どのような方々が擁立に動いているかまでは掴んでいないので、顔ぶれ次第では、それも杞憂かもしれませんが。ただ、「市民の強い出馬要望」とありますが、本当に力になって動いてくれる人たちかどうか。口三味線を弾くだけでは、これまでと変わらない。
小菅さんをここまで決意させた、とすれば、二重三重にはしごを支え、周囲にさらに人の輪を作るようでないと。
カミさんは、市役所の中を隅から隅まで知っている小菅さんが市長になったら、旭川市(役所)も変われるのでは?と、既に当選したようなことを言っていますが、その一方で、市議会があれでは?とも…。
市長選まで三カ月弱。現職の西川市長は、小菅前園長の出馬について「選択肢が増えるのは良いことだ」とおっしゃったと、本紙は伝えた。本当にその通りだと思う。枕は、ここまで。
いつもニコニコしている農家の友人が、珍しく怒気を含んだ口調で言う。「市内の小中学校の給食で、生野菜を使っていないの知ってる? 唯一、ミニトマトだけは使って良いんだと。旭川産の野菜をブランドとして売り出そうとか、旭川の野菜は日本一だとか宣伝しておいてさぁ、地元の子どもたちの給食には、危ないから生野菜は食べさせない。おかしいと思わない?」。
市教育委員会学校保健課給食係に取材した。市内の小中学校八十四校で、約二万六千人の児童生徒が給食を食べているのだそうだ。友人が指摘した通り、ミニトマト以外の野菜は、生では使っていない。北海道教育委員会が道内の市町村教育委員会に対して出した「学校給食の衛生管理マニュアル」に「野菜は、原則加熱処理する」とあるのが、その理由だという。担当者は、「地産地消のために、市内産の葉モノ、ホウレンソウとか、チンゲンサイとか、熱処理して食べる野菜が出回る時期には、強化月間を設定して、出来るだけ地元産の野菜を使うようにはしています」と説明しながら、「土の菌もあって、生の野菜は絶対に安全とは言えませんから…。何か事故があった時に、責任問題になりますし…。なぜ、ミニトマトだけは生でも良いのと言われても…」と歯切れが悪い。
農家の友人は言う。
「道のマニュアルには、『原則』熱処理とある。つまり、絶対に従わなくても良いという意味だろう。役人は、責任を取りたくないだけなんだ。子どもたちに、地元産の、新鮮な野菜を、生で食べさせるために、どうにかしよう、という前向きな発想をしない。役人組織の下の人は、そうだと思う。責任を取らされるのはイヤだから。トップだと思う。市長が『オレが責任を取るから、やりなさい』と言えばいいことなんだ。出来ない理由を考えるのが役人だという言葉があるけど、それを変えるのがトップの役目だろう」
「二年前に旭川食育推進会議条例を作って、栄養士、PTA、大学の先生、生産者の団体、調理師会、校長会…、二十人のそうそうたるメンバーを集めて、これまで三回、会議をやったけど、はっきり言って市のアリバイづくりに利用されているだけだ。旭川も食育に取り組んでいますよ、ってね。二十人の委員に交通費の実費を払ったら、もう予算はないというのが実態さ。その会議で活発な議論をして、それを行政の施策に反映しようなんて気概は全く感じられないね。言っておくけど、オレ、自分の作った野菜を高く売りたいから、給食に使えって要求しているわけじゃないよ。言えば、生産者としての誇りの問題だ。分かってくれる?」。