酒の席での話ではある。だが、酔っ払い同士のホラ話の中に、案外、出来のいい構想の萌芽のようなものがある、と酒飲みの私は我田引水的自己弁護だと承知しつつ、八割がた本気で思っている。
八十歳代の父母、五十代半ばの本人夫婦、そして二十代の独身の息子、娘の三世代が一つ屋根の下で暮らしている友人が言う。
――そりゃあ大正生まれのじいさんやばあさんと、昭和・平成生まれの息子や娘は食べ物の好みだって違うし、風呂に入る順番とか、嫁と姑の関係とか、不自由だったり、大変だったり、ときにはぶつかるし、ケンカもするし、しばらく口をきかないとかもあるさ。だけど、考えてみると、そんな山ほどのデメリット以上に、子育てを手伝ってくれるとかさ、大家族だからこそ出来ることがたくさんあって、それでウチの家族は何とかやって来れたと思うんだよなぁ。
――例えばモラルの欠如だとか、家族の絆がやせ細っているとか、他人の痛みを分からないとか、年寄りを大事にしないとか、子どもの躾や教育も含めて、三世代同居になれば、黙っていたって、自然に学ぶ。だって、一緒にいる皆の気持を察したり、気遣ったり、協力したり、遠慮したり、ときには言い争ったり、それを解決したりしなければ、暮らしていけないんだから。
――オレの娘や息子がもし一人暮らしをしたら、飯を食えるかどうか。車のローン、ガソリン代、携帯電話…、それにアパートの家賃だろう? 生活のコストという面でも、北海道は給料が安いんだから、その少ない給料で少しでも良い暮らしをしようとするなら、多世代同居さ。
――日本の社会で問題になっているほとんど全てのこと、百歳過ぎた年寄りの行方が分からないとか、二人の子どもを餓死させるとか、ぜーんぶ、三世代同居によって解決すると思うなぁ。
なるほどな、と思う。そういえば、小学六年生と中学三年生を対象にした全国学力テストで、三年連続で全国一になった秋田県では、小学生の八割、中学生でも七割近い子どもが塾に通っていないのだそうだ。どうして東京や大阪など塾通いが当たり前の大都市圏を抑えて秋田県の子どもたちの学力が全国一になるのか。その理由の一つとして考えられるのが、二世代、三世代が同居する家庭の多さなのだという。父親や母親は仕事で子どもの勉強など見る時間も余裕もないのは、全国どこの家庭も同じだろう。学校から帰ってきて宿題をしている子どもが「ここ、分からない」と尋ねるじいちゃんやばあちゃんが家にいる。これが大きいというのだ。
旭川市は、独自に「多世代同居を推進するプロジェクト」を立ち上げては、どうか。二世帯住宅を建築したり、一般住宅を二世帯住宅に改築する市民に、建築費を補助する。それもケチらないで、大胆に。不動産業界にも、二世帯型マンションやアパートの建築を促すべく税制面も含めて優遇策を打ち出す。住宅業界は裾野が広い。新築や改築の需要が増えれば、市の経済対策としても効果が出るだろう。その上、少子化や高齢化に対するある意味での対策となり、地域コミュニティーづくり、文化や伝統の継承などなど、“一石十鳥”ぐらいの意味を持つのではないか。家族のあり方からまちを変えて行く、そんな奇想天外な発想でもなければ、衰退一方の我がまちの未来は切り開けないと思うが、いかがか。
そうそう、前週、小欄で書かせていただいた、中小企業家同友会旭川支部が一日、買物公園で初めて開いた「どうゆう名店街」は、ドシャ降りの雨の中、たくさんの皆さんにお越しいただきました。小欄を読んで来場してくれた方も少なからずいたようです。来年は、厄払いのために、派手に餅まきでも企画しようかなどと仲間と話し合っております。有り難うございました。