土で家をつくる「アースバッグ建築」。その道内初となる建築が先月初めから、「江丹別の青いチーズ」で知られる伊勢ファーム(伊勢寿寛さん経営、江丹別町拓北二一四)で始まっている。どこにでも造れて、夏は涼しく冬は暖かく、災害にも強い上に環境に優しく、その上安価。そんな夢のような建築があるのだろうか。建築現場を訪ねた。(太野垣陽介記者、草嶋一介記者)
アースバッグ建築は、二十年ほど前にイラン人建築家のナダー・カリリ氏によって確立された工法。紛争地域や災害地向けに、どこでも簡単に住居を建てられるようにと、中東の土造りの家を参考にして開発された。一九九一年、カリリ氏は米・カリフォルニア州に研究所「カル・アース」を設立。研究・製作と普及活動を展開して、同州では法律により建築が認可されている。また、米航空宇宙局(NASA)での月面開発計画での採用も検討されているという。
建築中のハウスは高さ六㍍、直径五㍍の居間と、それぞれ直径三㍍のトイレ・寝室の計三室で、上から見るとちょうどミッキーマウスの顔と耳のような形だ。
工法は、深さ一㍍ほど土を掘り、強度のある繊維製の長い土嚢袋(ロングチューブ)に土を詰めて積み、叩いて圧縮・密閉させる。積み上げた土嚢を漆喰などで覆って完成だ。材料はほぼ土だけで、かかる費用は土嚢袋だけ(設備費を除く)。今回の大きさで材料費は約百万円。温度は地面から壁面へと伝わり、夏は涼しく冬は暖かい。強度はコンクリート建築の約四倍と言われていて、土なので燃えることもない。プールや風呂場に使っても問題ないという。
土は極端な性質(粘度が高い、砂が多いなど)でない限り建築が可能だが、今回の土地は粘土質だったため、旭川市内から運び入れて使用した。重機は深さ一㍍の穴を掘る時に使っただけ。アーチ状の構造で強度を保つため、完成形は円形のドーム型となる。
(●全文は本紙をご覧ください)