イタリアの巨匠建築家ミケーレ・デ・ルッキさんと、日本を代表する建築家・藤本壮介さんの二人によるインスタレーション展「LEAVEITBE」が、十月十六~二十七日の期間、JR旭川駅南コンコースで開かれた。ユネスコ創造都市ネットワークデザイン都市旭川会議開催実行委員会の主催。
同企画は、ユネスコ創造都市ネットワークの「デザイン都市旭川会議」(同月二十一~二十五日)の開催に合わせて行われたもの。二〇二四年四月に開かれたイタリア・ミラノデザインウィークでの展示を再現した。
今展を実施するにあたり、コンセプトに共感したカンディハウス(染谷哲義社長、永山北二ノ六)がインスタレーションの製作を担当。同社が家具を製造する過程で出る北海道産のナラ、タモ、ニレ、サクラ、カバ、五種の広葉樹の端材を素材に用いた。また、ミラノではレンガで作られていたデ・ルッキさんの作品も、同社が同じ端材を使って改めて製作した。
デ・ルッキさんが考案した「LEAVEITBE」は、地面に描かれた円であり、物理的かつ象徴的に、人間が干渉してはならない空間を定義したもの。藤本さんは、その考えを補完する作品として「ASAHIKAWA FOREST」を制作し、このテーマに対する解釈を表現している。
同月二十一日には、二人が展示会場を訪れ、それぞれが手がけた作品について解説。
デ・ルッキさんが「建築家として空間を提案する時、『無』のコンセプト、自然のように第三者が手をつけられない空間が最も大切だと考えています。この作品は、何かを作るのではなく、いかに手つかずの自然をそのまま残せるのか、という逆の発想から生まれたもの。今だからこそ、私たちはもう一度、自然が恵んでくれる最も美しい資材である木に注目し、余すことなく有効活用して、自然に感謝しなければなりません。作品がリング状になっている意味は、真ん中に自然、人が手をつけない空間を残しましょうということ。その空間を敬意を持って残していくべきというメッセージを込めています。作品にあるブロックの一つひとつが重なるように置かれているのは、人間は互いに支えあい、つながることで社会をつくっているという意味。私たちが自然を守ることで、自然から恵みをいただく、それがつながりだと思っています」。
藤本さんは「ミケーレさんのコンセプトを受けて、いい意味での豊かな空白を、旭川の木材を使って立体的に作りました。立方体の空間の上部にはサークル状のフレームがあり、そこから家具製造の過程で出た端材を吊り下げています。家具は精緻にデザインして木を切り出すのに対して、木そのものの表情は自然がつくりあげた人間が触れられないもの。このように、人間の活動とありのままの自然の間に生まれてくる端材は今回のコンセプトにふさわしく、その対比によって人工物と自然の共存・調和を表現できると考えました。これからの時代、何かを作ってすべてを埋めつくすのではなく、余白を残すことで、自然と人間が共存していく可能性を探っていけたら」と語った。(東寛樹)