第五十九回全旭川短歌大会が十月二十七日、ときわ市民ホール(五ノ四)多目的ホールで開かれた。旭川歌人クラブ(大関法子会長)の主催。

 年に一度、同クラブの会員が集い、全員が選者となって投票し、獲得票の多い短歌に賞を贈る。四十九人が応募し、そのうち四十六人が大会に出席した。

 まず七人の披講(ひこう=詩歌を読み上げること)者が歌の披講を行い、それぞれの歌について会員が意見を交わした後、授賞式に移った。投票の結果、最高賞の旭川歌人クラブ会長賞には、坂野榮子さんの歌「うぶすなの風の野面の吾亦紅(われもこう)父の背また母の背追ふ」が選ばれた。

 受賞を喜ぶ坂野さんは、「ずっと俳句をやってきて、短歌を始めてからはまだ三年目なんです。俳句の方はとても厳格だったんですが、(今所属している)近文短歌会では肩ひじ張らずゆったり作らせてくれて、感謝しています。夫のことや老いについてなど、身近なことを詠んでいます。これからも長く続けていけたら」と、今の思いを語った。

 あさひかわ新聞賞には、眞田宗雪さんの「古傷を癒さむと浸る湯面に弓張月やゆらり寄り添ふ」が選ばれた。

 受賞者には、賞状と盾が贈られた。そのほかの受賞者と受賞作は次の通り(敬称略)。

 ▽旭川市長賞 瓢子朝子「高齢となりたる身にも明日あるを信じて着替への服たたみ置く」▽旭川市教育長賞 奥野公輝「蛸帆立海胆海鞘螺はいらんべか古里臼谷は夏真っ盛り」▽北海道新聞社賞 國澤達子「戴けば沁みてやさしさひろごりぬ手紙はこころ灯すものにて」▽旭川歌人クラブ奨励賞 大久保春夫「柔らかき捻り効きたるフォームより放たれし槍はるか遠くに」▽旭川歌人クラブ優秀賞 北原さつき「母眠る棺にせめてせめてもと金木犀の花を散らしぬ」▽同 宮本順子「クラス会の案内とどく小春日をふとも校歌を口遊みおり」▽旭川歌人クラブ佳作賞 中島ひかり「左指すべて欠けてる青年の笑みとピアスの煌めく白露」▽同 佐藤繁隆「いつの間に長くなりたる夕影やコート整備の少年ふたり」
(岡本成史)