東光十三ノ八で「両角(もろずみ)柔道接骨治療室」(電話33-0893)を営む両角英行さん(75)が、自伝的小説「出会いはめぐり会い」を刊行した。両角さんはこれまで、川柳集「川柳の季節・上下巻」、「国旗国家 教えてくれない、習わないから、分からない。」、「米のゴハン」などを自費出版しており、今回が五冊目の著書。
農家の四男として生まれた主人公・四朗(両角さん)は、若い頃に出稼ぎの玉石集めの現場で腰を痛める。訪れた治療院では強く捻る施術を受けたが、これが元で腰痛がさらに悪化。様々な療法を試しながら、優れない体調に悩む日々を送る。
結婚して米作農家を営んでいた四朗は、ある治療師との出会いがきっかけで、自らも治療師を目指す。猛勉強の末、四十二歳で柔道整復師の免許を取得。修行のため勤務していた病院で、入院中の名治療師・沢野倉(本名:沢渡忠義さん)に出会い、その類まれなる治療テクニックと理論に驚愕し、師事する…。
両角さんは、「私がこの本を書いたのは、師匠である沢渡先生の素晴らしい治療理論を後世に残したいという思いからなんです」と語る。その沢渡さんは戦争中、衛生兵として南方などに従軍。熱帯で亡くなった兵士の骸骨、特に背骨を丹念に研究して「治療の基本は、骨格のゆがみ、椎骨のくい違いを直すこと」と見い出した。戦後は様々な病状に苦しむ人を治療したと言う。
沢渡さんは、自らの技術を後につづく人たちのために残したいと、著書の刊行を願っていたが、平成五年に昔の交通事故の後遺症から寝たきりとなり、平成十一年にその念願を果たさぬまま、帰らぬ人となった。
著者の両角さんは「私には、沢渡先生の技術そのものを書き記すことはできません。しかし、紙上でその理論と、先生の遺徳を紹介できれば、先生のご恩に報いることができるのでは、と思っています」と話す。
同書は市販しない予定。「沢渡先生とゆかりのあった方々に読んでいただければ、それで良い」と両角さんは話している。