「小熊秀雄を『しゃべり捲れ』講座」が十一月二十一日夜、ときわ市民ホールで開かれた。旭川ゆかりの詩人、小熊秀雄(一九〇一―一九四〇)の作品や人となりをもっと知ってもらおうと、小熊秀雄賞市民実行委員会(橋爪弘敬会長)が企画開催している。

 三十一回目の講師は、演出家の松井晶彦さん。一九五四年(昭和二十九年)旭川生まれ。東京で長く演劇に関わる仕事を続け、二〇一七年に旭川に戻った。前年度の第五十一回小熊秀雄賞から、最終選考委員を務めている。

 松井さんは、「なぜか小熊さんは僕の近くに」と題し、生まれたのが常磐公園の中の小熊の詩碑に近い、かつての天文台の下だったこと、生前の小熊と深い親交があった川尻泰司(人形劇団プーク代表・一九一四―一九九四)が生涯の師だったこと、東京に住んでいた頃、小熊の墓の草取りを二十年以上も続けたことなど、小熊との数々の不思議な縁を丁寧に話した。

 また、小熊の妻・つね子が書き残した文章を朗読しながら、松井さんは、世の中全てが戦争に向かう息苦し

い次代、赤貧のどん底であえぐ小熊の具体的な姿を集まった三十人に想像させた。
 最後に、小熊の詩「しゃべり捲くれ」に演劇的アプローチを試みるとして、喜怒哀楽の感情を読み分けて朗読、拍手を浴びた。会場からは「時間が足りなかった。もう一度、話を聞く機会をつくってほしい」との声が聞かれた。