5ノ16・TEL22―5570
二〇一二年にオープンして以来、この京懐石の店がずっと気になっていた。
「清酒北の誉」創設者の岡田重次郎宅(一九三三年建築)を改装した建物は、国登録有形文化財に指定されるほどで、さすがに重厚。和風を基調に、ステンドガラス、西日が美しい銅入り硝子、豪華なシャンデリアなど和洋建築様式が見事に折衷されている。
一階和室で、美しい庭に面して座った。それだけで、贅沢な時間が流れていく。「昼御膳」(三千円)に次いで人気なのが、「鴨せいろ」(千六百八十円)。幌加内産そば粉を石臼で挽き、手打ち、手切りした二・八蕎麦は、しっかりとした味ながら上品そのもの。さらに、そばつゆが素晴らしい。濃すぎず、薄すぎず、絶妙な味のバランスだ。分厚い鴨肉が入ったつけ汁も、うま味たっぷりで、京蕎麦の神髄を感じさせる。
店の魅力のすべてが味わえるのが「料理長のおすすめコース」(五千円)。「予約いただいたとき、お客様の好みなどをお聞きして中身を変えます」と、旧岡田邸200年財団の代表理事も務める女将の高橋富士子さん(59)。
訪れた日の前菜は、アワビの煮物、エビの旨煮、サーモンの幽庵焼き、栗の渋皮煮など八点。どれもこれも手間暇かけた京料理の逸品が、美しく並んでいる。道産食材と京料理が見事に融和しているのが素晴らしい。日本酒が進む。
二〇一七年版ミシュランガイドでは、〈おもてなしが素晴らしい店〉として掲載された。「いつも、お客さんにいかに喜んでもらえるかを考えています。それだけに、この部門で選ばれたことはうれしかった」と高橋さん。
最近は、道外だけでなく中国、韓国など海外のお客さんも増えているそうで、それも納得がいく。
定休日は水曜日。営業時間は午前十一時三十分~午後三時、午後五時三十分~九時三十分(予約のみ)。(フリーライター・吉木俊司)
ケロコのひとことメモ
ここに流れる空気、とても落ち着きます。秋の紅葉は「見事」というしかありませんが、冬の庭もまた趣きがあります。
最初は、ちょっと不満だった量もいまは増えて満足。そばつゆも大好き。夜の会合もここでやることが増え、コース料理がまたいい。きちんと手をかけて作っているのが伝わってきます。
特にお気に入りは、茶碗蒸し。単品でも注文できます。甘すぎず、だしのきいた上品なおいしさ。そのときどきで、湯葉が入っていたり、あんがかかっていたり変わるので、それも楽しみ。